「鶏」に関する表現   第四十話

今年は酉年、つまり「トリ」の年です。

 日本語の「トリ」には「鳥」と「鶏」の両方の意味がありますが、現代中国語ではこの二つが全然違うのです。ですから、中国の観光客は東京で食べた「焼き鳥」は「野鳥の肉」じゃなくて「鶏肉」と分かった時、激怒して旅行社にクレームをつけたという騒ぎが起きたほどでした。
さて、今回のコラムは「トリ(鶏)年」にちなんで、中国語の中の鶏に関する成語や熟語についてお話します。

鶏犬昇天(ji1 quan3 sheng1 tian1)
 昔の神話にある言い伝えによれば、王様が不老不死の薬を作った後、不注意で庭に少々粉末を落としてしまい、飼っていた鶏と犬がそれを食べたら、一緒に昇天したというのです。いま、この成語は「ある人が出世したり官位についたりしたら、彼と関係する人も幅を利かせるようになる」と、風刺する意味に使われます。

殺鶏敬猴(sha1 ji1 jing4 hou2)
 これは非常に日常的に使われる俗語です。猿をおどかすために、ニワトリを殺してみせるという「見せしめ」の方法です。人・鶏・猿がとても分かりやすい関係図となっていますが、人間のエゴや無力感が漂い、悲しい話でもあります。

鶏口牛后(ji1 kou3 niu2 hou4)
 全文は「寧為鶏口、無為牛后」で、省略して使います。もともと「牛の肛門よりもむしろ鶏口の方が小さいけどきれいだ」という比喩的な表現でした。意味は「大きな組織の中で人の後(牛のお尻)について支配されるよりも小さな団体でもその長(鶏の頭)となれ」です。起業家になりたい人にはぴったりです。日本語では「鶏口となるとも牛後となるなかれ」という訳語が定着しているようです。

 補足ですが、若い女性に向かって「鶏」に関する言葉を使う時、気をつけなければなりません。いつからそうなったのか定かではありませんが、隠語で「鶏」は「売春婦」と同義語になっているからです。


最後にまたクイズを一つ。
Q「鶏同鴨講」はどんな意味?
直訳すれば「鶏が鴨に話をする」ですが、日常的に使われる場面は主に「言葉や文化の違いなどでお互いに意志疎通ができない」という意味です。
広東方言からきた俗語で、中国本土では通用しないこともくれぐれご注意ください。



 



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